Constructed language

Šinvel

Šinvel語は、北の寒冷な草原地帯で話されているという設定の、 架空の言語です。

Šinvel is a constructed language, set in the cold grasslands of the north.

Opening line
Šinvel miin-si-vel — šin vi-ever-en.

Šinvel know-BEGIN-INDIRECT — wind NEG-stop-TRANSITION

Šinvel語を知り始めること——風は止まない。

Core design

設計思想

Phenomena arrive first; the speaker enters later.

Šinvel語は、能格-絶対格型動詞先頭、そして周期相必須という三つの骨格で成り立っています。
この言語では、人間が世界に働きかけるのではなく、現象のほうが先にあって、人間はそれに触れる存在として扱われます。

意志的な行為には特別な標識 -meva が必要です。
この言語の根底には、出来事は自分が起こすものではなく向こうからやってくるものだ、という感覚があります。
だから意志を明示するのは例外的な場面に限られ、普段は非意志の -me で話します。

Signature feature

周期相

There is no perfective. Things bloom, fill, shift, or sleep.

動詞には必ず四つの周期相のどれかが付きます。
重要なのは、完了相を意図的に持たないことです。
何かが終わるという表現がこの言語にはありません。あるのは、現れ、満ち、移ろい、眠ること。眠りは次の萌への準備です。

萌 · -si

現象が無から生じつつある。

盛 · -yø

十全に顕れている。充実した最中。

移 · -en

ある状態から別の状態へ向かう移ろい。

眠 · -ul

顕在化していないが、消えてはいない。

Phonology

音の設計

Cold vowels, one plosive, and a system of sensory consonants.

音は透明で冷涼な北方の響きを目指しています。
母音は前舌寄りの i, y, e, ø が主役。
破裂音は k だけで、あとは摩擦音、鼻音、流音が流れ続ける質感をつくります。
k が鳴るときだけ、石や衝撃や怒りのような硬質さが立ち上がります。

子音にはゆるやかな音象徴もあり、
s / š / l / lh は光と視覚、n / r / z は振動と聴覚、
m / f / v / mh / h / ŋ は触覚や呼気と結びついています。

Optional layer

証拠性

Five pathways of knowledge, all optional.

Šinvel語には五つの証拠性がありますが、これは義務的ではありません
どの経路で知ったかを添えたいときだけ、動詞の外側に載せます。
視覚、聴覚、身体感覚、間接知、直観/夢。
知覚の経路を、必要なときだけ動詞に添える仕組みです。

接辞 経路 意味
-lis 視覚 見て知った
-nar 聴覚 聞いて知った
-fem 身体感覚 肌・鼻・舌などで知った
-vel 間接知 伝聞・推論で知った
-søl 直観・夢 説明できないが知っている

Speaker world

話者の世界

Seasonal movement, animism as perception, and time felt as return.

話者である Šinvel の人々は、北西岸の草原・海岸線・針葉樹林を行き来する遊牧民として構想されています。
定住化の途中にあり、北部はより保守的、南部はより都市的。
時間は直線ではなく、季節と移動のくり返しとして感じられます。

万物に精霊 vøøri が宿るという感覚がありますが、それを客観的な事実として主張する言語ではありません。
そう見える、そう感じる、という知覚の問題です。
薬草や祈りなどの古い実践 søølrin も残っていますが、効くかどうかは誰にもわかりません。

Writing system

文字体系

An abugida that rises from a shared horizon.

SinvelScript は、地平線を共有するアブギダとして設計しました。
すべての文字が一本の基線に立ち、天井線はありません。
文字が草原から不揃いに生えているように見えることを意図しています。
母音記号の位置は周期相に対応しています。

上が萌、右が盛、左下が移、下が眠。
読む前から、ことばがどの位相にあるのかを目で感じ取れるようになっています。

Example work

作例

Møøl, a four-part poem that turns the same grassland through the cycle.

四季の連作詩 Møøl は、同じ草原を四つの周期相で詠む作例です。
萌では兆しが、盛では充満が、移では去りゆく音が、眠では潜在が前景化する。
文法と世界観が実際のテキストにどう現れるかを見るのに最も適した作品です。

From Møøl
Silsi møøliin,   silsi ŋølhe,
røøli iir-si     keis-in mhøøle-nøs.

grass bloom-BEGIN, flower bloom-BEGIN,

water breathe-BEGIN stone-PL cold-ABL

草が芽吹く。花が芽吹く。冷たい石々から、水が息を始める。